今年の宇田さん、芝居はじめです。というわけで、
Next!「テネシー・ウィリアムズ一幕劇集 アメリカン・ブルース・フェスティバル エイプリル・プログラム」を観に、大阪・中崎町のcommon cafeまで。
アメリカの劇作家テネシー・ウィリアムズの一幕もののお芝居4本立ての、短編集のような公演。
キャスト半分ぐらいは観たことない方でしたが、それぞれ存在感があって堪能しました。ながらく気になっていたcommon cafeが、こぢんまり濃密なのに広々した素敵な場所だったのも嬉しかったです。
テネシー・ウィリアムズは・・・前に「欲望という名の電車」を文句なしの豪華キャスト(ブランチ:篠井英介、スタンレー:古田新太、ステラ:久世星佳)で観て、なにそれ?と憮然となったことがあって以来のトラウマが消しがたかったのですが。
今回も決して後味のいいお芝居ではなかったです・・・。どうしようもない状況で壊れゆく、狂いゆくひとを正確なタッチで描いて、ぶれない。いくらなんでももうちょっと救われてもいいんじゃ、と思っちゃう私は「所詮お芝居、ハッピーエンドにでもしといて」って馬鹿にしてるのですか?なんて変なことを考えてしまったりもして、幕間のたびにぐったりためいき。ひとつの悲劇が延々つづく長編とはまた違う、短編だからこそのチラリズム的あざやかさがまた哀しくて、しょぼん。
(前回、朗読会で読んだイプセン「野鴨」もこんなだったなぁ。役者さん揃いだからついつい観に行ってしまうけど、なんでこういうテキストを選んだですか?って訊いてみたいものです<訊いてみなさいって?)
■「しらみとり夫人」
出演:曽木亜古弥、宮川サキ、赤星マサノリ
「欲望〜」のブランチを彷彿する、高貴なお家柄の女性の没落エピソード。
「ありがとう、ミスター・・・」
全然後味はよくないけど、ラストで「おおっ」という驚きもあって、忘れがたい一幕。宮川サキさんの下世話すれすれの感じが素敵でした。赤星さんは完全に役がずるいですからー・・・!
■「財産没収」
出演:希ノボリコ、橋本健司
もとは裕福で幸せだった一家が見舞われる不幸、とりのこされた子供。
「あたし、姉さんみたいに生きてくの、このあとずっと」
ノボリコさんが13歳のおんなのこ役で!いままで観た中でいっとうブチ切れた役だったけど、おそろしいぐらいはまっていてぞくぞくするようでした(ひらひらキラキラの衣装が似合いすぎていて、それもまた哀しさ倍増)。橋本さんの一見おだやかでふつうなたたずまいも、実は狂気と紙一重のあやうさ。こどもたちのおはなしなのに、4本中いちばんおそろしかった。
■「火刑」
出演:上田友子、宇田尚純
煤けたどこかの街のすみで、過敏に神経質な息子とその母親の堂堂めぐり。
「あの人が聞き耳をたててるんです」
宇田さんが「インディアンポーカー」東京公演以来、実に1年半ぶりの舞台出演。狭いとこで観てるのがもったいないように通る声と、どたばたしない動きの奮闘ぶり(笑)はしっかり健在でした。そしてまさかと思ったけど、狂いゆくひとの役で。クレイジーな役は初めてではないけど(「白血球ライダー2000」の老刑事ギャリソンとか「666」のヘルシング教授とか)、神経質そうにたえずイライラそわそわしてるとこは初めて観たかも。素を全然うかがわせない役者ぶりが、随分長かったように思えるブランクのあとだからよけいに嬉しかったのです。ワイシャツにネクタイ、ズボンと揃いのベストに革靴そしてメガネな姿にもぐっときました(笑)
Next!唯一の役者でもある上田さんの、はかなげなのに芯の強そうな居住まいと綺麗な動きにぼんやりみとれる。着物きたら似合うだろうなー、と思っていたら日舞習ってらっしゃるとかで!うおー、観たいわ。
■「踏みにじられたペチュニア事件」
出演:園本桂子、赤星マサノリ、信平エステベス、宮川サキ
孤高のおだやかさで日々を送っている若い女性と、彼女の日常を破壊する勢いで風穴をあけにくる見知らぬ男性と。
「来るんですか、来ないんですか」「そうね、たぶん・・・」
前の3本に較べて妙にとってつけたような感じがしてしまったのは、単に好みの問題なのかどうか。宮川サキさんが主人公やっていたらどうだったかな、と妄想。